ユキニフル – something on the snow –

新しい物語 lyrics : 宏川露之
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振り出しの場所を探すのは 薄い服では続けられず

道行き 景色だけが光り 他愛もなく 夜 咳が響く

繰り返し過去を巡るたび 現在地も少しずつずれる
雨雪 故郷を思い出す 代わり映えしない 駅のホーム

冷たくなった二人の手は 積もる悲しみもすくえずに

新しい物語なんて あるはずもないから
全て書き写されたような 昨日と同じ今日が始まる

休日に作り替えられた 生きる理由を抱きしめても
踏切 渡りきる間に 風に飛ばされて 消えていく

近づきかけた二人はまだ 息をするように笑うけど

変わらないこの世界だって 愛せるのならば
誰一人絶えることもなく 幸せなんて容易いけど

すれ違う間違えた日々を 許せはしないから
全て塗り換えてしまうように 流す涙で夜空に浮かべた

綴られる意味をなくしても終わらない未来
破り捨てられてあてもなく 途切れた過去
かけがえのない現実から逃げるように
何度でも眠りについて君を見つける
 
また目を覚ますまで

新しい物語なんて あるはずもないのに
もういっそ嘘でもいいから せめて最後に信じさせて

いつまでも続く夢なんて あるはずはないから
いまが本当であるように 終わらないで、と願いをかける

願いをかける

 

サイレン lyrics : 宏川露之
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このまま 離れずにいてよと

そんなふうに 泣きつく声みたいだ

読みかけた文庫本は 結局開かず
長い旅もここで 一休み
海が近い景色は 明日の予報に
慣れた様子 ここから 遠くまで

まだ暗い通りを走る 車の窓ガラスの向こう側
朝を告げるサイレンが 小さく響いた

そのまま 離れずにいてよと
そんなふうに 泣きつく声みたい 
それでも 始発に乗り込んで
いつかまた 会えるよと 嘘をついた

混み合った電車内は 安ホテルよりも
狭いけれど 君と ぼくら繋いでいる
夜の長い都会で 海沿いのモールで
セルフサービス フードコートで待ち合わせ

隣に座るぼくたちは 初めて泣いた君の顔を見た
肩を揺らす悲しみが 小さく響いた

そのまま 離れずにいてよと
そんなふうに 泣きつく声みたい
うつむく 横顔に 隠れて  
「たとえば……」って その次を探している

時計塔 高校 重ね着 中途半端な風邪の予防
すぐにまた 耳に届いた マスク越しの君の声
JR 終点の街に もう一度 これで最後?
開いたページの隅っこに 約束を書きとどめる

ぼくらが 交わした 言葉だけ
何度でも あの空に 弾かれて
それでも 遠ざかる 星を見て
向こうまで行きたいと 確かに聞こえた

このまま 気づかないふりして
忘れて さよならでもいいけど
そのまま 離れずにいてよと
そんなふうに 泣きつく声みたいだ

 

傘を忘れただけだから lyrics : 宏川露之
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傘を取りに帰っただけなんだ

今日の天気に気がついたから
ずっと遠くに見える建物が
こんな時間に明かりをつけている

昨日、遅くまで起きていたのは
空が曇ってばかりいるから
ずっと夜が続いていくみたいで
眼が慣れるころに朝がやってくる

長い遊歩道 きっと あの街から遠く離れて
出会った人とは別れて 結局 何にもないな

透明な冷たい雨が
色を持って見えるのは
行き場を失ったぼくたちの
閉じた瞼のせいだ

傘を取りに帰っただけなんだ
横目で眺めて起き上がれない
ぼくはどこまで行こうとしていて
思い出せずにここにいるんだろう

狭い玄関が濡れて 水溜りが乾くあいだに
浮かんだ君とは会わずに 結局 何にもないな

循環列車 夜行バス 全て欠航 飛行機も
それでも眠らず歩いていたなら 遠いどこか連れて行けたら 

引きずって潰れた過去が 
そうなった訳があるのなら
帰る場所も失くしたぼくたちが
閉じた瞼に

透明な冷たい雨が
君を追って見えるのは
行き場を失ったぼくたちが
傘を忘れたから

忘れただけだから

 

冬、空白 lyrics : 宏川露之
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やりきれなくても日々は過ぎていく
何の所以もなくなったこの街で
生きる意味を探すうちに冬になり
目が覚めるのはいつだって夜だ

眩しいモールのフードコートで
ぼくらはずっと話を続けた
昨日選んだ結末が、明日を遠ざけようとするから
繰り返し、繰り返し話を続けた

それでも救えなかった君のことを
救えたはずの君のことを
後悔の数と同じだけ世界を巡り
何度だって忘れずにいる

拭いきれない傷も涙も
向かうべき道を示してはくれないけれど
白く染まった景色に浮かんで
かけがえのない現実はここなんだと
教えてくれる

どれだけぼくらが握りしめても
ただ、こぼれ落ちていく空白のいまに
何かを変えられたらと願う
まだ、終わりなんて望まないように

望まないように

 

ユキニフル lyrics : 宏川露之
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深夜の駅に雪は変わらず 乾いた喉は返事もできず
明け方までここで消えた思い出と 何もないまま今日が過ぎていく

あの日 君が言った
「後悔すらもできないときがきっとくるから」
その前に全てを伝えようとしても 来てくれないから街は遠のく

冷たい風がぶつかる路地を眺めて 仕方ないなと季節につぶやいた
融けない雪に感傷はないけど ただ嫌うだけ

だから、雪に降る ぼくらが泣いていたように
ずっと昔から決まっていたみたいに
街灯に照らされて淡く光る 真夜中をひとりきり

寂しい都市に居座っている 凍った足元 暗い工事現場
コンビニの明かりが無愛想に照らして 携帯の電池は無くてお別れ

アラームにした好きな音楽を聞いたら 恥ずかしいくらい涙がこぼれた  
誰でもいい この綺麗な声に謝ろう

だから、雪に降る ぼくらが傷ついたように
ずっと昔から決まっていた昨日も
街灯に照らされて淡く映る 真夜中をひとりきり

朝が来る前に 星空も見えないくらいだった 
ぼくらの未来が そっと降り止んだ
まだ微かに残る 君の温もりさえも全て 払うように
立ち止まる風景の色を変える 

だから、雪に降る ぼくらが泣いていたように
ずっと昔から決まっていた 戻れない あの日にだって

雪に降る 
ぼくらが生きてきた過去も覆い
ずっと昔から決まっていた未来も
街灯に舞い上がり生まれ変わる
真夜中をひとりきり