明日、嘘をつく

明日、嘘をつく lyrics : 宏川露之
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情けないよな 一度だって 君を 忘れたことはないのにね
夜が明ければ 初めての世界 せめて本音くらい捧げてみるよ
新しい日が始まったよって
明日、嘘をつく

住み慣れた街が 違う場所みたい
教室と庭に埋めた わがままに「またね」
選曲悩んで 苦笑い ブックマーク
「正確じゃないけど元気だよ」 体調なんて聞いてどうする

カーテンに包まって 目覚まし騙し いまはまだ夜
灯りの消えた街を眺めて 残酷なまま無視をする
それで明日がやってくる

情けないよな 一度だって 君を 忘れたことはないのにね
夜が明ければ 繰り返す世界 せめて本音くらい捧げてみても
新しい日が始まったよって
明日、嘘をつく

8時からずっと 通しの演技で 
よくわからない自己紹介 詰んだ
触れても冷たく 霜焼けた心
急行は楽で バイトは辛くて 傘は嫌い 暗い海が見たい

狂わない時計はない 遠距離 彼方の星のせいで
わたしの毎日がずっと そうなってもいい
たとえ明日が来なくとも

動けないほど 疲れ切って 君が 記憶になくて 戸惑って
寝付けないのは ほんの一夜で せめて前頭葉だけ眠らせて
懐かしい日は終わりだよって
昨日のわたしに嘘をつく

思い違いを許す約束は 本当の言葉に委ねるから
踏切前 月、沈むまで 自転車押して 探した彗星
君がまだあの街で 一人 無事なら 雰囲気が少し違っていても
わたしも少しは 進めるかな 不自然でも 一人進めるかな 

変わりたいんだ 物語の 端に 佇むままでいるよりは
今日を終えたら 途切れてく日々 せめて電話くらい繋いでみようか
情けないよな 一度だって 君を 忘れたことはないのにね
夜が明けても なにもない世界 せめて本音くらい伝えてみれば

いつだってまた会えるよって  
いつかはまた会えるかなって
いつだってまた会えるからって 

明日、嘘をつく

放課後の月  lyrics : 宏川露之
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学校の狭い図書室には いつも冷たい人しかいないから
吹奏楽の練習 嫌われて 閉じられた窓 舌打ちの音

長編の続きを読む前に 借りてきた悲しい物語のなかで
世界はきっと変わらないや、と まるで子供みたいに拗ねた
あの子に私は似てたりするのかな
最後のチャイムをただずっと聞いていた

屋上 君と 交わした言葉
気づかないふりをして 世界中 ひとりきり

放課後の月を 眺めている私が
もし泣いていても 気にしないでね
壊れた朝を繰り返す街で
こんなにきれいなものはないから

リング・ワールド lyrics : 宏川露之
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生活よりも有意義なタイトルは
販売制限解除後に入手した
視界広い 望んだ未来 おまけに壮大なBGM
私だけのリング・ワールド

日々のつながりを断ち切って
作ったリンク不要のアカウント
スタートメニュー 期待は高鳴り
並んだレビュー 誰も彼もが褒めちぎる
―フリーロームなプレイに 物語は常にノンリニアで
「生きる意味」を探そう

現実の困難は いとも簡単に消え去っていって
束の間の充電が 一人、この場所に戻る時間

―Now Loading !

恒久的 現在地は ワンルームの片隅で
存在論 更新して 再定義 繰り返す 
ずっと何もないまま生きてた日々に
選択肢と分岐点は現実より複雑で
その中へと特別な夢を見てる
明日もこの世界さえあれば

環世界的なデザインのコミュニケーションツール 私を補助して
一人 嫌い 騒いで終わる それでも寂しいならどうせ
諦めていた私が出逢う よく似たあなたの姿

共有のアイコンは いつも優しい顔で 微笑んで
教室にいるときも そばで見守ってくれるから

―Welcome back !

最終章 目的地は 二人だけのシナリオで
専用ROM 接続して アップデート 読み込んだ
ずっとみんな拒んで生きてた世界に
標準的 経験値で積み重ねた人生を
失っても何一つ怖くはない
「生きてるだけで幸福」だから

夜遅くに 息を止めてはダメみたい
いつかここで死んでしまおうと あなたと約束したから
現実に戻るときの別れの言葉は
いつも決まって「生きて帰ってきてよ」
だからそれまで 私をそっと抱き寄せて
二人きりでこの世界で

到着したエンディングは 未完成のプログラム
散在したソースコード 繋がらず ハンギングアップ
ずっと信じ続けた あなたも途絶える

瞬間的 再起動で 点滅する自意識に
問われている 帰るべき私の場所
―Do you want to leave it or continue the game?

恒久的 現在地は ワンルームの片隅で
その中から特別な夢を見てる
明日もこの世界だけあれば

有病率 lyrics : 宏川露之
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合併症気味の孤独と文庫と
電子表示の処方 エンドポイント
裏表紙 二次元半のARコード
読み取って、返却のフォルダに

離れ離れになった人たちと 
有線のモニタで話題を繋いだ
加熱された水槽 蒸気 途絶えていくメッセージの意味
久しぶりの返信は「また会おう」だったっけ 
答えられる言葉もないから
三点リーダーを繰り返す

ソフトウェア・アップデート 再起動 
中断した通話    最後の充電は昨日
気まずさが距離を遠ざける事情
所在ない風のせいで、終日、雨は横殴りの模様

―自動会話に切り替えますか?
―自動会話に切り替えますか?  

十数年、長い長い生活のログは
有病率  平均値並みのありふれた苦悩を抱え
厭世観 蔓延る 無意識的ワンルームの隙間で
唯物論を疑うデバイスに信仰は奪われた

旧交を一つずつ途絶えさせて 都市と地続きの孤島の上
重症化した心から順にサインアウトでさよなら
LANケーブル 中低速で行き来するシグナルの果てに
存在しないはずの世界を映し出して笑っていた

貸出を繰り返して すぐに飽和した治療薬はもう効かず
たった一人で生きることに付いて回る倦怠はまるで不治の病だ
入力を急かすように明滅するカーソル 窓を叩く音 
夜を濡らす雨、眠りにつく前 伝えたい思いに 涙 溢れた

「ここからはぼくの言葉で語らせてもらえれば」

ニューゲーム lyrics : 宏川露之
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「このリング・ワールドでは 
プレイヤーは3つの種族から自分の分身を選びます
乱暴者のノーティ 臆病なウィンプ そして嘘つきのフィブ
それぞれの種族にはできることとできないことがありますが
きっとあなたは、いまの世界よりももっと自由を感じられるでしょう」

経年に伴う身体の成長 追いつかない精神の成熟
やがて発症した知人・友人アレルギー 逃げ込んだ 月次定額 更新制のニューワールド

仮想空間 電子世界 どんな説明もこの場所には似合わない
広大無辺の都市 それと同時にワンルームの部屋で
あなたが望むなら形を変える設計様式 ファンタジックからサイバネティック
過去から未来までのクロニクル その全てもアーカイブ

ここで交わされる無数のトーク
半匿名制のチャットルームは地下鉄よりも満員で
たった一つの共通点は見知らぬ人に囲まれているということ
でも居心地は不思議と悪くない

選択肢 選択肢 選択肢 選択肢
任意性コミュニケーションの補助ツールは常時起動
選んだタイプに従って これまでのあなたの人生の物語では
決して経験することはできなかったはずの 全く新しい世界を繋ぐ

いま あなたがいたその世界に
ないもの全てがここにはあり
演じる姿だけを残して
選んだ現実から目覚める

いま あなたがいるこの世界に
あと その心を委ねたなら 
きっと 誰より あなたのことを
愛してあげられると 約束しよう

約束しよう

アイ変わる世界 lyrics : 宏川露之
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夜が明けるたび 世界があんまり変わるものだから 
失くしたものを集めるため 毎日、廻る、廻る

写真を撮らせて 昔のカメラで 今日の風景を
君と寄り道 空気の色 変わるまで 廻る

駅前 ロータリー 愚痴は聞こえない距離で
永遠なんてフィクションも 君の声にはとても似合うから

アイ変わる世界で いま わたしのすぐそば
抱きしめた君と
過ぎてゆく季節に 響く 名指しの雨音
他人事みたいに ねえ

外は寒いはず コンタクトつけて 二度寝 一律で
ラストダンジョン これで終わり 最後に、廻る、廻る

思えばわたしたち どうして惹かれたんだろう
グラファイト 君を暖めて 空っぽの部屋で

九時前 宵闇に 傘は通らない路地で 
制限なしの質問も ここでなら答えられる気がした

アイ変わる世界で いま 花火と冬空
寂しげな君と
待ち合わす間に 映る 名無しのユーモア
付け足した言葉 消さないで
雨に 濡れた服が 乾くまで

アイ変わる世界で いま わたしのすぐそば
愛してた君と
触れ合えた日々は ずっと 消えないでここに
変わらずにいるから

アイ変わる世界で いま ふたりのすぐそば
離れてく意味も
泣き腫らす瞼を 開け しゃがんだすみっこに
さよならを告げて その先へ行こう

アイ変わる世界

トワイライト lyrics : ein himinn
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遠ざかる闇と 別れを告げる光
混ざりあいながら 互いに寄り添いあう
なにもない空が 次第に灯す景色
乾いた北風が 僕らを包み込む

「たとえば…」なんて 呟いてみる
「何でもないよ」 独りごとを閉まっておいた

ただこの夜明けに 心奪われて
君の横顔は 俯いたままで
何度も 何度も 言葉探すけど
今もう少しだけ このままでいたかった

僕らの約束が 僕らを遠ざける
悲しい味だろう 飲み込む想いは

「たとえば、なんで出逢えたのかなあ」
そう言う君に 何も答えられず
時間が来た 手を離さなきゃ

まためぐり逢おうと 見送る両手に
背を向け 必死に 涙を堪える
まだその姿に 振り返られたら
君の涙も 乾かせられるのかなあ

何度も 何度も 聞こえる泣き声
背中にぶつかり 心を揺さぶる
聞こえないふりして 歩き出したとき
最後の最初 君への言葉が浮かんだ

ただ歩み続ける 当て所ない旅路を
躓き 転んで 涙し 迷っても
また歩き始めよう ここから少しずつ
昨日についた 土は払わずに

いま選び始める 果てしない旅路を
君の歩幅で 歩けばいいんだよ
君の歩幅で 生きればいいんだよ