アイソレイト

アイソレイト  lyrics : 宏川露之 / ein himinn
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検診と検査 済ませたばかりで
思想的問題はなにひとつ見当たらず
それでもここから移動できる場所は
僕を縛り付ける頭の中だけ

自由について意味を問い始めた
隣人は僕の知らぬ間に消えてしまった
通り過ぎた景色を映す ビルの切れ端は 
終わりと始まりの道標だ

いつか今日を思い出す
僕が世界から逃げ出した部屋
隠したのはこぼれた本音か
それでもまだ心に思うなら

いつの日か僕が願うのは
違う世界の今日を生きた僕
たった一人で歩き始めて辿り着く
未来まで

排気塔、吐き出す煙が色づき
希望的観測は一日と保たないや
誰かの接触履歴を測って
次の誰かに怯える人に怯える僕

孤独に慣れるうちに この世界の
現実感はいつの間にか消えていた
覆い隠す記憶に眠る君の手触りも
気付けばあっけない白昼夢だ

いつか今日を繰り返す
君が世界から消え去った街
失くしたのは悲壮な希望か
それでもまだ明日が続くなら

いつかまた僕が出会うのは
同じ世界の今日を生きた僕
たった一人で歩き疲れて立ち尽くす
未来にて

知らない場所に いつしかまた戻るため
出会うすべてに別れを告げる
ただそれだけの短い言葉
どうなってもいい 終わってもいい
なんて言葉ばかり背負ってさ

なんて言葉ばかり背負っていた
僕らここで孤立した

いつか今日が思い出す
僕ら世界から捨てられた日を
映したのは些細な病か
それでもまだ傷が癒えぬのなら

いつの日か僕が夢に見た
違う世界へ今日を連れ出して
たった一人の旅の途中で手放した 未来だけ
たった一人の旅の終わりに繋がった 未来まで

 

或ル少年少女ノ「シ」 lyrics : 宏川露之
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大事な夜に告白しようと思う

僕が肌を灼かないように 傘を貸してくれたあの子に
陽射しの強い日が続いてばかりだから
あの子が死んでしまうまえに 告白しようと思う

人工太陽 長引く故障 乗り継いだレンタカー 
繰り返す電子案内 街頭の深夜番組のテーマは「僕らの未来」 

少年少女ノ「シ」には 理由らしいものはなくて
美しいってことに 惹かれるだけで 泣いて
どうせ、 僕らはいつも 気が済むまで馴れ合って
白々しさに 耐えられず 笑うんだ
十年ちょっとの日々も 命と呼べる長さで
くだらないってことに 近づくだけで 泣いて
どうせ、 僕らはいつか 呆れるほど簡単に
後ろめたさに 耐えられず 終わるんだ

私は君に訊いてみたいことがある
たった一人 明るい夜に 傘も差さずにいたあなたに
陽射しの強い日が続いてばかりだけど
どこか別の世界で君や 私は生きられると思う?
 
信号待ちの赤い点滅 溶け出した現実
嘘をつくのは嫌いだけど 本当のことを話すのはもっと苦手だ

少年少女ノ「シ」には 理由らしいものはなくて
土砂降りの雨に 肩を濡らした 君は
いまにもたった一人で 思い出さえ投げ出して
知らない街で 私だけに 笑うんだ
十年ちょっとの日々を 命と呼ぶには短くて
懐かしいってことが 離れるだけで 泣いて
どうせ 私もいつか 呆れるほど簡単に
虚しい夜に 耐えられず 終わるんだ

あの子は午前三時ごろに死んだ
狭いワンルームの外 道端に倒れて
僕らは所詮、 仕方ないと 生きて
不意に逃げるようにして 言い訳をやめたんだ

私を見つけたのが 君でよかった
きっとまたすぐ会えるはずだけど
あなたの中であと少し生きていさせて
いつでも私はそこにいるから

生きてるから

少年少女ノ「シ」には 理由らしいものはなくて 
美しいってことに 惹かれるだけで 泣いて
どうせ、 僕らはいつか 死ぬときまで馴れ合って
白々しさに 耐えられず 笑うんだ

十年ちょっとの日々も 命と呼べる長さで
くだらないってことに 近づくだけで 泣いて
いまでもたった一人で 思い出だけ握りしめ
知らない街で 君のこと 探しても

どうせ、 僕らはいつか 呆れるほど簡単に
続く世界に 忘れられ 終わるんだ

 

世界構築のプロトコル lyrics : 宏川露之
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世界構築のプロトコルは
あの日から全て塗り替わり
避けようのない現実と
僕らは静かに距離を取る

はじめに、手と手がほどかれて
数ヶ月、体が触れることもなくなり
そして、声の届かないほど遠く、人々は離れていった
どれだけ言葉を選ぼうと 心の網目をすり抜けて 
僕らの気持ちが揺れるのは 感情が目に見えないほど 細かく小さなものだから

そんな風に誰もが知っていたはずの 約束事はもう忘れられてしまった
だから人はみな、ただこの世界から孤立する

いまにも落ちてきそうなほど 高い建設途中のビルは
どれも工事が続いたまま姿を変えない
僕らの言葉はどれもスクリプトエラーでしかなくて
そうして世界は、緩やかに終わっていく

一時的な避難場所だと定めたこの狭い穴ぐらが
終の住処に成り果てるまでの永い時間
何もできず、正しくは何をしようともせず
僕らは全てを眺めているだけだった

味気ない画面越しで

脈拍も体温も 風邪気味の声も
自分自身以外は、触れることない幻で
そのどれも すぐそばに 思い出せる日が
遠くなっていく ずっと遠く、遠くなっていく

 

みらい lyrics : 宏川露之
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新世紀は一人で迎えました

崩れたビルと割れた何かのディスプレイ
生きものは虫ばかり たまに聞こえる遠吠え
大きい声をうらやましいなと思うのです
   
中継地は学校、裏口から
汚れた床で眠る 苦手な早起き
すきま風 割れた窓 震えても夜は長く
寝返りさえも打てない場所で夢を見るんです

終電には乗り込むつもりだった
休戦日に世界が無くなるなんて
 
みらい こんな 私だけ泣いて
もう、ずっと寂しいままで
見慣れていた 景色 探しても
街並みは暗く、ただ暗く 

みらい こんな 私だけがいて
もう、とても眠たいけれど
初めて見た 遠い灯火が
塞いだ目を開かせてくれた
 
救命器はおととい使い切った
潰れた喉で歌ういつかのゲームソング
飲み物は雨ばかり 自販機はどれも空で
広告ポスター 炭酸 昔は好きだった

トンネル前 廃バスが塞ぐ道
進んだ先にきっと 答えがあるから
あと一歩 あと一度 乗り越えて 擦りむいて
あと少しだけ 生きていたいと思うのです

一日ずつ 明かりを追いかけて
近づくから 願いも叶うといいな

みらい こんな 私だけ泣いて
もう、ずっと寂しいままで
抱えていく 荷物 軽くても
足跡は深く、ただ深く

みらい こんな 私だけがいて
もう、とても眠たいけれど
誰かが いま 生きて待つのなら
見つけて会いに行けますように

たどり着いた目的地には 機械式の点滅灯
全自動 人の手も借りず 淡々と瞬いて
高汚染レベルの警告 それだけのための光
心のどこかで気づいてた 諦めたって見ないふり

生きる意味なんてなかった それなのに失くした気がした
また見つけるのは簡単だ それなのにどこにもないのは

それなのにどこにもないのは

みらい こんな 私だけ泣いて
もう、ずっと寂しいままで
明日はどこ 向かうあてもなく
塞いだ目は 世界さえ閉じて

みらい こんな 私だけがいて
もう、とても眠たいけれど
「誰かが また 起こしてくれたら」
なんて夢はもう見れないかな

みらい こんな 私だけ一人
もう、生きていないみたいだね
それなら いま 流した涙は
目を覚ますまで 乾かないように

 

旧市街
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漂着物 lyrics : 宏川露之
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成層圏で聞き慣れた音は 
積もる落ち葉が踏みつけられる音に似ていて 
もっと高く なんの音もなくなった今では 少しだけ懐かしく思う

いつのまにか、生活の空間は遠く離れて
浮かぶ星座の形すらもはっきりと違って見えた

一日の終わりが、これまでの終わりになったあの日
そろそろ帰ろうかって、君か私か、どちらかが言って
どこに帰るんだろうね ってもう一人が言った
降り続く雨に膝まで浸かって、月が消えるころに君を見失う

まばたきをした間に 私を囲むすべてが消えて
ほんの小さな日々のすみかだけが 冗談みたいに ただそこにあった

時計の針もないこの場所で どれくらい経ったかもわからないけれど
私たちに流れ着けばと 伝えたい言葉を綴り切った

渡した 短い物語の 続きが
私と君との 未来にならないように
いつかは 二人が たどり着いた 終わりも
話して聞かせてくれるまで ここから願うよ

 

アキ lyrics : ein himinn
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秋の空に 白い壁が染まる
それを見上げて 呼吸していた 病室の片隅

上擦った声や 下手な笑顔が 雲のように遠くなっていく
締め切った窓に 閉じ込めたなら なんて考えたまま

手を握って二人になれば 今もまだ“なれる”気がした
僕の口癖 いつも茶化して なにもなく笑い合っていた日々が懐かしい

淡い髪が 紅い頬を隠す
それを見下ろし 鳴り続けた 心臓の音

何も言わずに 旅立つのなら
降り出した雨に傘は返して ずぶ濡れのままで 君を見送るよ

手を離して一人になれば 何となく“なれた”がした
相も変わらず軽薄だねと 今度こそ愛想尽かして叱ってくれよ

約束ならいらない 懐かしいこと 懐かしいまま 消えていって
その中で残る確かな跡が 僕の中 生きている

手を引かれず一人でいれば 何もなく“いれた”気がした
照れくさそうに 誤魔化しながら 何ができただろうか 君のために

手を解いて二人になれば またいつか“なれる”気がした
手を振りながら 見送る背中 最後だと離れる君に ここでさよなら 

ずっと忘れない

いままでありがとう