ストーリーライト

ストーリーライト lyrics : 宏川露之 / ein himinn
——————————————————–
この夏に生まれた 厚い台風みたいに

信じるものばかりを 僕は探し回っている
創作を終えてさ 外へ出掛ける頃には
きっと二度と出会うこともない 二つになった世界 

部屋の隅 置かれて 閉じた小説の束も 
最後まで読み終えず ただ埃を被っている
ガラクタは捨ててさ それより古い想いを
抱えて届けようとしたことも 忘れていった

僕らは僕ら自身をそれなりに信じて
離れた世界にいる「君」に出会えると 思ってた

きっかけにもならないできごとを積み重ねていくこの物語
映り込んだレンズ 街の色は 君の世界を覆う雲の色
百年単位で捲るページのあとに いつか現実になる日を願う
僕らのストーリーライト ストーリーライト 

僕たちが交わした 古い手紙の中身は
失くしたものばかりを 今も示し続けている
無数の線が結ぶ 君と僕との位置すら
きっと二度と出会うこともない 二つのままの世界

僕らは僕ら自身のこれまでを集めて
繋げた世界にいる「君」に出会えると 思ってた 

とりとめもない日々の結末を繰り返していくこの物語
破り捨てた今日を書き殴って 塗り潰れた僕らのプロローグ
百年単位で綴るページのあとに いつか現実になる日を願う
僕らのストーリーライト ストーリーライト

いつのまにか開けた視界に 二人で顔を見合わせて
今日を変わらず照らす月明かり 夜に浮かんでいる僕ら
長い坂道を駆け抜けて 遠く指を差す君がいた
見下ろした街の停電が終わった 今、世界が変わった  

きっかけにもならないできごとを積み重ねていくこの物語
映り込んだレンズ 街の色は 君の世界を照らす星の色
百年単位で捲るページのあとに いつか現実になる日を願う
僕らのストーリーライト 

とりとめもない日々の結末を繰り返していくこの物語
拾い上げた今日を書き直して 塗り変えていく僕らのエピロ―グ
百年単位で記すページの中で  いつか現実になる日と出会う
僕らのストーリーライト 

吹き上がる風に包まれ「またわたしたちが会えるとき」
そう始まる約束 口にして 二人 分かつ夜明け前
世界の麓に並んで 空の下 灯りを眺めて
その言葉の続きは僕が描いてた
ストーリーライト 

 

有病率 lyrics : 宏川露之
——————————————————–
合併症気味の孤独と文庫と

電子表示の処方 エンドポイント
裏表紙 二次元半のARコード
読み取って、返却のフォルダに

離れ離れになった人たちと 
有線のモニタで話題を繋いだ
加熱された水槽 蒸気 途絶えていくメッセージの意味
久しぶりの返信は「また会おう」だったっけ 
答えられる言葉もないから
三点リーダーを繰り返す

ソフトウェア・アップデート 再起動 
中断した通話    最後の充電は昨日
気まずさが距離を遠ざける事情
所在ない風のせいで、終日、雨は横殴りの模様

―自動会話に切り替えますか?
―自動会話に切り替えますか?  

十数年、長い長い生活のログは
有病率  平均値並みのありふれた苦悩を抱え
厭世観 蔓延る 無意識的ワンルームの隙間で
唯物論を疑うデバイスに信仰は奪われた

旧交を一つずつ途絶えさせて 都市と地続きの孤島の上
重症化した心から順にサインアウトでさよなら
LANケーブル 中低速で行き来するシグナルの果てに
存在しないはずの世界を映し出して笑っていた

貸出を繰り返して すぐに飽和した治療薬はもう効かず
たった一人で生きることに付いて回る倦怠はまるで不治の病だ
入力を急かすように明滅するカーソル 窓を叩く音 
夜を濡らす雨、眠りにつく前 伝えたい思いに 涙 溢れた

「ここからはぼくの言葉で語らせてもらえれば」

 

永訣の夜 lyrics : ein himinn
——————————————————–
白昼の夢はまだ 頭の中、駆け巡り

それにうなされたままで 月日は通り過ぎていく
寝付けない夜の先に 目を凝らし続けても
まるで奇を衒うような 眩しい星の灯りだけ

長い旅路の果てに 見知らぬ空が広がり
夜が明ける少し前 あなたの声が聞こえた

空の手のままで 記憶を辿れば
誰にも気づかれずに 始まりの場所へ戻る
街を見下ろして 少し踏み出すだけで
あなたの夢も忘れるわ だから今は眠らせておいて

眠れない夜数えた 虚構の物語から
時折顔を出しては 押し寄せる古い光

果たせない約束も 手には余る思い出も
全て捨てたはずなのに それでもまだ届かない

同じ空の下 手と手が掠めれば
二人を隔てる距離は 星のように遠ざかる
何も言わないで 笑って見せるだけで
全ての意味が分かり そしてもう分かり合えず

夏の風が吹き 羊歯の葉が揺れれば
物語の始まりの 光の柱へ向かう
夜を飲み下し 生まれ変わるために
私はまだこの名前で 独り歌を歌い続けるわ